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世界が速すぎる時代に、Bialystocksは「一瞬」を歌った——新曲『一瞬』考察

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2026年5月22日、Bialystocksが新曲『一瞬』をリリースした。

本作はテレビ朝日系報道番組『サタデーステーション』のテーマ曲として書き下ろされた楽曲であり、Bialystocksにとって初めて報道番組のテーマソングを担当した作品でもある。

しかし『一瞬』は、単なる番組テーマ曲という枠組みだけでは語り切れない。

この楽曲には、近年のBialystocksが一貫して描いてきた「時間」と「感情」のテーマが静かに流れている。

Bialystocksが描いてきた時間

Bialystocksの音楽を聴いていると、不思議な感覚になる。

派手な展開があるわけではない。
劇的なカタルシスを狙うわけでもない。

それでも楽曲が終わったあと、まるで短い映画を観終えたような余韻が残る。

それはボーカルの甫木元空が映画監督としても活動し、キーボードの菊池剛がジャズやクラシックの素養を持つこととも無関係ではないだろう。Bialystocksの楽曲には、出来事そのものよりも、その出来事が過ぎ去った後の空気が描かれている。

『Tide Pool』では揺らぐ感情を、
『Quicksand』では日常の風景を、
そして近年の『Everyday』や『言伝』では、人と人との距離や記憶を見つめてきた。

そんな彼らが新たに提示した言葉が「一瞬」だった。

ニュースの時代に必要な音楽

『一瞬』が書き下ろされた『サタデーステーション』は報道番組である。

私たちは毎日膨大な情報を浴びている。

SNSを開けば世界中の出来事が流れ込み、昨日のニュースは今日には忘れられていく。

Bialystocksは本作について、

「嘘みたいな現実がめまぐるしく天気のようにうつろう世の中で、この曲が一瞬でも、安らぎある週末に貢献できたらうれしい」

とコメントしている。

この言葉は非常に象徴的だ。

ニュースが「今」を伝えるメディアだとすれば、Bialystocksはその「今」の中に埋もれてしまう感情を拾い上げようとしている。

世界は常に動き続ける。

しかし人間の心はそれほど速く動けない。

『一瞬』は、そのズレを優しく包み込むための音楽なのかもしれない。

「一瞬」は儚さではなく、存在の証明である

タイトルだけを見ると、『一瞬』は儚さをテーマにした楽曲のようにも思える。

だがBialystocksが描く「一瞬」は少し違う。

一瞬だからこそ忘れられない。

一瞬だからこそ人生を変える。

誰かと交わした言葉。
帰り道に見た夕焼け。
眠れない夜に流れていた音楽。

人生は長いようでいて、記憶に残る場面はほんの一瞬の連続だ。

Bialystocksはそのことを知っている。

だから彼らの楽曲には、派手な感情表現よりも、記憶の輪郭をなぞるような繊細さがある。

『一瞬』もまた、時間の短さを嘆く歌ではなく、時間の尊さを見つめる歌として響いてくる。

武道館へ向かうBialystocksの現在地

2026年のBialystocksは、初の日本武道館公演を控えている。

インディーシーンの中で静かに支持を広げてきた彼らが、ついに大舞台へたどり着こうとしている。

だが興味深いのは、規模が大きくなった今も音楽の視線が変わっていないことだ。

大きな物語ではなく、小さな感情。

社会の喧騒ではなく、その隙間にある静寂。

『一瞬』はそんなBialystocksらしさが凝縮された楽曲と言えるだろう。

Olivia Dean『Man I Need』を思わせる軽やかなグルーヴ

『一瞬』を初めて聴いたとき、筆者の頭に浮かんだのはオリヴィア・ディーンの『Man I Need』だった。

もちろん両者はまったく同じ楽曲ではない。

しかし、ジャズやソウルを土台にしながら、軽やかなピアノと柔らかなリズムで聴き手を包み込む質感にはどこか通じるものがある。

Olivia Deanの『Man I Need』は、ポップ、ソウル、ジャズを横断しながら、親密さと開放感を同時に獲得した楽曲として高く評価された。特に跳ねるようなピアノのフレーズと、肩の力の抜けたグルーヴ感は楽曲全体の大きな魅力となっている。

一方でBialystocksの『一瞬』もまた、情報過多な時代の緊張感を解きほぐすような穏やかなグルーヴを持っている。

近年の日本のインディーシーンでは、シューゲイザーやドリームポップ的な浮遊感が注目されることも多いが、『一瞬』から感じられるのはそれとは少し異なる温度だ。

それはロンドンを中心に広がる現代ソウルやジャズポップとも共鳴する、風通しの良い洗練である。

Bialystocksはもともとジャズを基盤としたアレンジセンスを持つバンドだが、『一瞬』ではその要素がよりポップな形で結実しているように思える。

だからこそ本作は、従来のBialystocksファンだけでなく、Olivia Deanや近年のUKソウル/ジャズポップを愛するリスナーにも自然と届く作品になっているのではないだろうか。

おわりに

世界はますます速くなっている。

新しい話題は次々と生まれ、私たちはそれを追い続ける。

そんな時代のなかで、『一瞬』は立ち止まるための音楽だ。

何かを主張するわけでもなく、答えを示すわけでもない。

ただ、流れていく時間のなかに確かに存在する感情を見つめている。

Bialystocksの『一瞬』は、過ぎ去ってしまう瞬間の儚さではなく、その瞬間が持つかけがえのなさを静かに教えてくれる。

だからこそ、この曲はニュースの合間に流れるテーマソングでありながら、私たち自身の人生にも深く寄り添うのだ。

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