2020年代のインディーロックシーンを見渡したとき、「次はこのバンドかもしれない」と感じさせる存在はそう多くない。
その中で確実に名前が挙がるのが超☆社会的サンダルだ。
2023年には「マイナビ閃光ライオット」のファイナリストに選出され、「出れんの!?サマソニ!?」への出演も果たした。下北沢を拠点に活動を続けながら、インディーシーンの外側へとその名を広げている。
そして彼らを一躍有名にしたのが「可愛いユナちゃん」だった。
YouTubeで大きな話題を呼び、現在ではSpotifyでも300万回を超える再生数を記録している。
しかし超☆社会的サンダルの面白さは、単なるバズや話題性にあるわけではない。
彼らは今の若い世代が抱える感情の歪さや未熟さ、嫉妬や執着を驚くほど生々しく描き出す。
だからこそ多くのリスナーが「自分のことだ」と感じてしまうのだ。
神聖かまってちゃん以降の系譜
超☆社会的サンダルを聴いてまず思い浮かぶのは、やはり 神聖かまってちゃん だろう。
日常の些細な感情を異様な熱量で拡大する感覚。
誰もが心の奥に隠している醜さや未熟さを、むしろ肯定するような歌詞。
その血統は間違いなく受け継がれている。
一方で、単なるフォロワーではない。
ボーカルのオニザワマシロが書く歌詞には、 相対性理論 の持つポップネスや、 クリープハイプ の私小説的な視点も感じられる。
さらに近年のインターネット文化やSNS世代特有の距離感が混ざることで、まったく新しい質感が生まれている。
超☆社会的サンダルは「かまってちゃん以降」のサブカルロックを更新しているバンドなのだ。
「可愛いユナちゃん」はなぜ刺さったのか
代表曲「可愛いユナちゃん」は、一見すると可愛い女の子への憧れを歌った曲に聞こえる。
しかし実際はもっと複雑だ。
羨望。
嫉妬。
執着。
憧れ。
自己嫌悪。
そうした感情が区別されないまま渦巻いている。
オニザワマシロはユナちゃんを直接否定しない。
それどころか「可愛い」と繰り返しながら、その存在に取り憑かれていることを隠そうとしない。
この感覚は極めて現代的だ。
SNSによって他人の人生が常に可視化される時代。
「好き」と「嫌い」の境界が曖昧になり、羨望と嫉妬が同時に存在する。
そんな感情を、これほど率直に歌った曲は意外と少ない。
だからこそ若いリスナーはこの曲に衝撃を受けた。
それは恋愛ソングというより、現代の精神状態そのものを描いた楽曲だったのである。
『漂☆流』という現在地
1stミニアルバム『漂☆流』には、「可愛いユナちゃん」だけではない超☆社会的サンダルの魅力が詰まっている。
「魚を追いかけて」では青春の焦燥感が疾走感のあるサウンドと共に描かれる。
「熱中症」では日常の息苦しさがポップなメロディの裏側から滲み出る。
「薬を飲んでも」では不安や孤独がユーモアと紙一重の距離で表現される。
彼らの楽曲は常に危うい。
しかしその危うさは演出ではない。
本当にそこに存在する感情だからこそ説得力がある。
超☆社会的サンダルはどこへ向かうのか
現在の超☆社会的サンダルは、まだ「可愛いユナちゃん」のインパクトで語られることが多い。
しかし今後の課題はそこから先だろう。
ひとつの代表曲を持ったバンドが、その先でどのように作品世界を拡張するのか。
神聖かまってちゃんがそうだったように、初期衝動だけでは長くは続かない。
超☆社会的サンダルにはすでに優れたソングライティングがある。
印象的なメロディもある。
そして何より、同世代の感情を掴み取る観察眼がある。
もし彼らが今後、個人の感情だけでなく社会や時代そのものへ視線を広げていけば、単なるサブカル人気バンドでは終わらないだろう。
超☆社会的サンダルは今、ブレイク前夜にいる。
そしてその未来は、おそらく多くの人が想像しているよりもずっと大きい。