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Deerhunter『Why Hasn’t Everything Already Disappeared?』考察|”消えゆく世界”を見つめた、最後のスタジオ・アルバム

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インディーロックを更新し続けたDeerhunter

2000年代以降のUSインディーロックを語るうえで、Deerhunterは欠かすことのできない存在です。

アトランタで結成された彼らは、サイケデリックロック、シューゲイザー、ポストパンク、ドリームポップを自在に横断しながら、常に独自のサウンドを追求してきました。

フロントマンのBradford Coxによる繊細で詩的なソングライティングは、多くのミュージシャンにも影響を与え、『Microcastle』『Halcyon Digest』などの作品は現代インディーロックの名盤として高く評価されています。

そして2019年に発表された『Why Hasn’t Everything Already Disappeared?』は、現在に至るまでDeerhunter最後のスタジオ・アルバムとなっています。

「なぜ、まだすべては消えてしまわないのか」

まず目を引くのは、このアルバムタイトルです。

『Why Hasn’t Everything Already Disappeared?(なぜ、まだすべては消えてしまわないのか)』

この印象的なタイトルは、フランスの思想家Jean Baudrillardの著書に由来しており、Bradford Coxは「タイトルそのものが楽曲を包み込む額縁のような存在だった」と語っています。

タイトルだけを見ると終末的にも思えますが、この作品は単純に「世界の終わり」を描いたアルバムではありません。

むしろ、変わり続ける社会のなかで、人間は何を失い、何を抱えたまま生き続けるのか──そんな問いを投げかけているように感じられます。

現代社会を映し出す”SF”

Bradford Coxは本作「現在についてのSF(Science Fiction about the present)」と表現しています。

未来を描くSFではなく、「いま」を少し離れた場所から眺めるような視点。

そのためアルバムには、文明の停滞や資本主義への違和感、人々の孤独や喪失感が静かに漂っています。

しかし、そのテーマは決して説教的ではありません。

美しいメロディと幻想的なアレンジによって包み込まれているため、重いテーマでありながら自然と耳に馴染んでいきます。

おすすめ曲「Death in Midsummer」

本作を初めて聴くなら、まずは「Death in Midsummer」をおすすめします。

チェンバロを取り入れたクラシカルな響きと、不穏さをまとったメロディが印象的で、アルバム全体の空気を象徴する一曲です。

美しい旋律の裏側に、不安や喪失感が静かに潜んでいる。

そんなDeerhunterらしいコントラストが凝縮されています。

記事にYouTubeを埋め込むなら、「Death in Midsummer」の公式ミュージックビデオがおすすめです。

“最後のアルバム”として聴こえてしまう理由

2019年以降、Deerhunterは新たなスタジオ・アルバムを発表していません。

活動休止を正式に宣言したわけではないものの、ライブ活動もほぼ行われておらず、本作は結果的に現在までの最後のスタジオ作品となっています。

だからこそ、このアルバムを聴くとどこか「締めくくり」のような空気を感じてしまいます。

もちろん制作当時からその意図があったとは言えません。

しかし、作品全体に漂う静かな諦めや、美しくも儚い余韻は、Deerhunterというバンドの一つの到達点として響いてきます。

今だからこそ響く作品

リリースから数年が経った現在でも、『Why Hasn’t Everything Already Disappeared?』は色褪せていません。

むしろ、社会が大きく変化した今だからこそ、その問いかけはより現実味を帯びているようにも思えます。

派手なロックアルバムではありません。

しかし、一曲一曲をじっくり聴くほどに、新たな発見が生まれる作品です。

まとめ

『Why Hasn’t Everything Already Disappeared?』は、Deerhunterが残した最後のスタジオ・アルバムであると同時に、彼らの成熟した音楽性と鋭い視点が結実した作品でもあります。

美しいメロディのなかに、現代社会への静かな問いを忍ばせるBradford Coxのソングライティングは、このアルバムでも健在です。

もし今後Deerhunterが再び新作を発表する日が来るとしても、本作は彼らのキャリアにおける重要な一枚として語り継がれていくでしょう。

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