アークティック・モンキーズのフロントマンが見せた、もうひとつの表情
2000年代以降のUKロックを代表するバンド、Arctic Monkeys。そのフロントマンとして数々の名曲を生み出してきたAlex Turner(アレックス・ターナー)は、鋭い言葉選びと独特のメロディセンスで高い評価を受けてきました。
そんな彼が2011年に発表した『Submarine』は、キャリア初となるソロ作品です。
Arctic Monkeysの荒々しいギターサウンドとは異なり、本作ではアコースティックギターやピアノを中心とした静かなアレンジが印象的で、アレックス・ターナーのソングライターとしての繊細な一面が存分に表現されています。
映画『サブマリン』のために書き下ろされたサウンドトラック
『Submarine』は、2011年公開のイギリス映画『サブマリン(Submarine)』のサウンドトラック(EP)として制作されました。
映画はウェールズの港町を舞台に、思春期の少年オリヴァー・テイトが初恋や家族との関係、自分自身の成長に向き合う姿を描いた青春ドラマです。
監督はリチャード・アイオアディ。ユーモアと切なさが同居する独特の映像美は公開当時から高く評価され、現在でも青春映画の名作として語り継がれています。
映像と音楽が溶け合う美しさ
『Submarine』が特別な作品として語られる理由のひとつは、映画と音楽が驚くほど自然に溶け合っていることです。
アレックス・ターナーの歌は、決して物語を大げさに盛り上げるものではありません。
主人公の孤独や恋愛への戸惑い、誰にも言えない感情を、静かに隣で見守るように寄り添っています。
映画の淡い色彩やゆっくりと流れる時間、美しい海辺の風景に彼の楽曲が重なることで、『Submarine』は映像作品としてさらに深い余韻を残しています。
まるで映画のために音楽を書いたというより、映画そのものが音楽の世界観の中で息づいているかのような一体感があります。
シンプルだからこそ胸に響く6曲
EPには全6曲が収録されています。
- Stuck on the Puzzle
- Hiding Tonight
- Glass in the Park
- It’s Hard to Get Around the Wind
- Stuck on the Puzzle (Intro)
- Piledriver Waltz
どの楽曲も必要以上に音を重ねることなく、ギターやピアノ、ストリングスを中心としたミニマルなアレンジが採用されています。
アレックス・ターナー特有の詩的な歌詞と柔らかな歌声が際立ち、バンド作品では味わえない親密さがあります。
特に「Stuck on the Puzzle」は、本作を代表する一曲。切なくも美しいメロディは映画の世界観を象徴しており、多くのファンから現在でも高い人気を誇っています。
Arctic Monkeysとは異なる魅力
Arctic Monkeysでは鋭いギターリフや力強いバンドサウンドが印象的ですが、『Submarine』ではそれらをほとんど排除しています。
代わりに残るのは、アレックス・ターナーという一人のソングライターの純粋な感性です。
派手な展開はありません。
しかし、その静けさこそが作品最大の魅力であり、何気ない日常や青春の一瞬を優しく照らし出しています。
後の『Tranquility Base Hotel & Casino』などで見られる内省的な作風の片鱗も、本作にはすでに感じ取ることができます。
まとめ
『Submarine』は、アレックス・ターナーが初めてソロ名義で世に送り出した作品であると同時に、映画と音楽が理想的な形で結びついた名サウンドトラックです。
映画『サブマリン』の美しい映像は、この音楽があってこそ完成したと言っても過言ではありません。
Arctic Monkeysのファンはもちろん、静かなフォークや映画音楽が好きな人にもぜひ聴いてほしい一枚です。
青春の曖昧な感情や、言葉にならない孤独をそっと包み込むような本作は、アレックス・ターナーというアーティストの新たな魅力を教えてくれるでしょう。