ドリームポップを象徴する存在、Beach House
アメリカ・ボルチモアで結成されたBeach Houseは、ヴィクトリア・ルグランとアレックス・スカリーによるドリームポップ・デュオです。
幻想的なシンセサイザー、リバーブをまとったギター、そしてヴィクトリア・ルグランの深みある歌声によって生み出されるサウンドは、2000年代以降のインディーミュージックに大きな影響を与えてきました。
『Teen Dream』『Bloom』『Depression Cherry』『7』など数々の名作を発表し、2022年には18曲からなる大作『Once Twice Melody』で新たな到達点を示しました。
その流れを受けて2023年に発表されたのが、5曲入りEP『Become』です。(ウィキペディア)
『Once Twice Melody』の”もうひとつの物語”
『Become』は、『Once Twice Melody』のレコーディング・セッションで制作された5曲を収録したEPです。
Beach House自身は、「これらの曲は『Once Twice Melody』の世界には収まらなかったが、それぞれがひとつの小さな世界を形作っている」と語っています。また、「少し粗削りで、広がりのあるサウンドを持ち、どこか霊的な場所に存在するような作品」と表現しています。(Sub Pop Records)
アルバムに収録されなかった楽曲というと”未完成”の印象を持つかもしれません。
しかし『Become』を聴くと、それは決してアウトテイク集ではないことがわかります。
5曲だけだからこそ成立する、一貫した空気感があります。
余白が際立つ、美しい5曲
『Become』は『Once Twice Melody』よりも静かで、内省的な作品です。
ドリームポップ特有の幻想的なサウンドはそのままに、より余白を大切にしたアレンジが印象的で、一音一音がゆっくりと空間へ溶けていきます。
派手な展開はありません。
しかし、その静けさの中にはBeach Houseならではの美しさが凝縮されており、夜の時間や一人きりの瞬間によく似合う作品となっています。
おすすめ曲「Devil’s Pool」
本作の中でも特に印象的なのが「Devil’s Pool」です。
ヴィクトリア・ルグランの神秘的なボーカルと、ゆっくりと揺れるシンセサイザーが重なり合い、Beach Houseらしい幻想的な世界を存分に味わうことができます。
EP全体の空気感を象徴する一曲でもあり、初めて『Become』を聴く人にもおすすめです。
記事にYouTube動画を埋め込むなら、「Devil’s Pool」の公式オーディオまたは公式ビジュアライザーがおすすめです。
“未収録曲”だからこその魅力
『Become』は、『Once Twice Melody』に入りきらなかった楽曲集という位置付けですが、その完成度は決して本編に劣りません。
むしろ、5曲だけを独立させたことで、それぞれの楽曲が持つ繊細な表情がより際立っています。
『Once Twice Melody』を愛した人にとっては世界観をさらに深く味わえる作品であり、初めてBeach Houseに触れる人にとっても、約25分というコンパクトなボリュームで彼らの魅力を体感できる一枚です。
まとめ
『Become』は、Beach Houseの創作がいかに豊かなものであるかを改めて証明した作品です。
アルバムには収まらなかった5曲でありながら、それぞれが確かな存在感を放ち、一つのEPとして美しく完結しています。
『Once Twice Melody』の”続編”ではなく、その世界を別の角度から照らすもうひとつの物語。
Beach Houseの音楽に惹かれる人なら、この静かで幻想的な5曲もきっと心に残るはずです。