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「知っている」ことの先へ──GEZAN『i ai ORIGINAL SOUNDTRACK』から『I KNOW HOW NOW』へ続く現在地

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日本のオルタナティブミュージックシーンを語る上で、GEZANという存在を避けて通ることはできない。

2009年、大阪で結成されたGEZANは、マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo/Gt)を中心に活動を開始した。当初からハードコアパンク、ノイズ、フォーク、サイケデリックロックを混在させた独自のサウンドを展開し、既存のジャンル分けを拒否するような姿勢で注目を集めてきた。

彼らが特異なのは、単なるロックバンドに留まらないことだ。

自主レーベル「十三月」を立ち上げ、多くのアーティストをサポートしながら独自のコミュニティを形成。さらに全感覚祭という前代未聞の無料フェスを主催し、企業スポンサーに依存しない新しい音楽フェスティバルの形を提示してきた。

全感覚祭は単なるイベントではない。

そこには「誰も排除しない」というGEZANの思想そのものが表れている。

また彼らは全国のライブハウスのみならず、国内最大級の音楽フェスティバルである FUJI ROCK FESTIVAL への出演を重ね、日本のオルタナティブシーンを代表する存在へと成長していった。

しかしGEZANの本質は規模の拡大にあるわけではない。

彼らは常に「音楽は何のために存在するのか」という問いを投げ続けてきたバンドだった。

2023年に発表された『あのち』は、その問いに対するひとつの到達点だったと言える。

死と再生、共同体、祈りをテーマにした作品はGEZAN史上もっとも開かれたアルバムとして高く評価された。

そして2024年。

彼らは再び新たな問いを携えて『I KNOW HOW NOW』を世に送り出した。

「知っている」という危うさ

『I KNOW HOW NOW』というタイトルは非常に示唆的だ。

直訳すれば「今ならわかる」。

しかしGEZANがここで歌っているのは、理解に到達した人間の勝利ではない。

むしろその逆だ。

現代社会は誰もが何かを知った気になっている。

SNSを開けば答えが流れてくる。

ニュースは要約され、意見はテンプレート化される。

世界はかつてないほど説明可能になったように見える。

だが本当にそうなのだろうか。

GEZANは本作を通じて、「理解したつもりになること」の危険性を問いかけているように思える。

タイトルの中にある「KNOW」は断定ではなく皮肉として響く。

知っていると思った瞬間に、人は他者の痛みを見失う。

GEZANが長年歌い続けてきたテーマもまた、そこにある。

混沌を祝福するサウンド

GEZANの魅力はいつの時代も整理されないことだった。

本作でもその姿勢は変わらない。

ノイズが吹き荒れたかと思えば、突然フォークソングのような静けさが訪れる。

祝祭的なリズムと不穏なノイズが同居し、希望と絶望が同じ場所で鳴っている。

普通のバンドなら矛盾になってしまう要素が、GEZANの音楽では自然に共存する。

それは彼らが世界そのものを肯定しているからだろう。

世界は本来、矛盾に満ちている。

善悪だけでは割り切れない。

希望だけでも絶望だけでもない。

GEZANはその複雑さを削ぎ落とさず、そのまま鳴らそうとしている。

だから彼らの楽曲は時に難解でありながら、不思議なほど人間的に響く。

『あのち』以降のGEZAN

『あのち』が共同体への祈りだったとするなら、『I KNOW HOW NOW』はさらに個人の内側へ踏み込んだ作品だ。

社会を変えること。

誰かを救うこと。

理想を掲げること。

そうした大きな物語の前に、まず自分自身はどう生きるのか。

本作ではそんな視線が強く感じられる。

GEZANはこれまでも政治や社会について歌ってきた。

しかしそれは決してスローガンではなかった。

本作でも同じだ。

彼らは答えを提示しない。

代わりに問いを残す。

そしてその問いは聴き手自身へと返される。

GEZANが鳴らし続ける理由

結成から15年以上。

GEZANは日本のインディーシーンにおいて特別な位置を築いた。

しかし彼らは一度も完成したことがない。

成功や知名度に安住することなく、常に新しい表現を探し続けている。

全感覚祭も、十三月も、GEZANというバンドも。

そのすべては「別の未来は作れるのか」という実験の延長線上にある。

『I KNOW HOW NOW』はそんな彼らの現在地を示す作品だ。

それは答えを持ったアルバムではない。

むしろ答えが存在しない時代に、それでも他者と共に生きるための音楽である。

知っていると思い込む世界の中で。

GEZANは今日も、「本当にそうだろうか」と問い続けている。

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